1. CBDは肝臓でどうなる?「CYP酵素」がカギを握る代謝の仕組み
私たちが口にしたCBDは、体の中でどのように処理されるのでしょうか?その中心的な役割を担っているのが、主に肝臓にある「CYP(チトクロームP450)酵素」というタンパク質です。
CYP酵素は、体に入ってきた薬やサプリメントなどを分解し、体外へ排出しやすい形に変える働きをしています。CBDもこのCYP酵素、特にCYP3A4やCYP2C19といった酵素によって分解されることが分かっています。
1-1. 多くの薬と共通する「代謝経路」の重要性
このCYP酵素は、実は様々な医薬品の代謝にも深く関わっています。そのため、CBDを摂取することで、これらの酵素の働きに影響を与え、一緒に飲んでいる薬の効き方や副作用に影響が出る可能性があるのです。
例えば、CBDがCYP酵素の働きを「邪魔」してしまうと、併用している薬が体内で分解されにくくなり、血中濃度が上昇してしまうかもしれません。そうなると、薬の効き目が強くなりすぎたり、副作用が出やすくなったりするリスクがあります。
特に、普段から多くの薬を飲んでいる高齢者の方や、特定の病気で薬を服用されている方は、CBDの摂取前にかかりつけの医師や薬剤師に相談することが非常に重要です。
2. CBDと肝臓の安全性:知っておきたい潜在的なリスク
「CBDは肝臓に負担をかけることがある」という話を聞いたことはありませんか?これは、まったく根拠のない話ではありません。
2-1. 肝機能の異常「肝酵素上昇」と「薬物性肝障害(DILI)」の可能性
近年の研究では、特に高用量のCBDを摂取した場合に、肝臓の異常を示す肝酵素(ALT, AST)の値が上昇したり、「薬物性肝障害(DILI)」と呼ばれる症状との関連性が示唆されています。
ある臨床試験では、健康な成人がCBDを摂取した際に、一部の方で肝酵素値が上昇したという報告があります。これは、CBDが体内で処理される際に、肝臓に一時的な負担をかける可能性があることを示しています。
2-2. 用量に注意!「安全な摂取量」の考え方
肝臓への影響は、CBDの「摂取量」と深く関係しています。一般的に、摂取量が多くなるほど、肝臓に負担がかかるリスクが高まると考えられています。
例えば、イギリスの食品基準庁(FSA)は、健康な成人に対して1日あたり70mgを超えるCBDの摂取を推奨しないと発表しています。これは、安全性に関する現時点でのエビデンスに基づいたものです。
「少量なら大丈夫」という見解もありますが、大切なのは、ご自身の体格や体質、そして摂取するCBD製品の品質や濃度をしっかりと確認することです。
2-3. 要注意!リスクが高まるケースと「モニタリング」の重要性
次のような方は、CBDを摂取する際に特に注意が必要です。
- もともと肝機能に問題がある方
- 肝臓に負担をかける可能性のある薬を飲んでいる方(例:てんかん薬のバルプロ酸など)
これらの場合、CBDの代謝が遅れることで体内にCBDが残りやすくなり、肝臓への負担が増す可能性があります。
CBDを摂取し始めてから体調に異変を感じたり、病院での検査で肝酵素値の上昇を指摘された場合は、速やかに医療機関を受診し、CBDの摂取を中止するかどうか専門家と相談してください。
3. CBDは肝臓を守る?「肝細胞がん」への驚きの可能性
これまでの話を聞くと、「CBDって肝臓に悪いだけなの?」と思われるかもしれません。しかし、CBDには肝臓の病気、特に「肝細胞がん(HCC)」に対する治療の可能性も示唆されています。
3-1. 複雑なメカニズムでがん細胞にアプローチ
研究では、CBDが肝細胞がんに対して、次のような様々なメカニズムで働きかける可能性が報告されています。
- がん細胞の成長を抑える
- がん細胞を自然に死滅させる(アポトーシス)
- 新しい血管ががん細胞に栄養を供給するのを防ぐ(血管新生抑制)
- がん細胞が転移するのを防ぐ
これらの働きは、CBDが特定の受容体(TRPV1やPPARγなど)に働きかけたり、がんの増殖に関わるシグナル伝達経路を阻害したりすることによって引き起こされると考えられています。
3-2. 期待と課題:さらなる研究が不可欠
これらの有望な研究結果は、主に動物実験などの前臨床研究で得られたものです。実際に人での効果や安全性については、まだ限られた知見しかありません。
「CBDでがんが治る!」と安易に飛びつくのではなく、今後の大規模な臨床試験の結果を待つ必要があります。また、肝臓に治療効果をもたらす一方で、肝臓への毒性のリスクもゼロではないため、病気の方への適用は、医師の厳密な管理のもとで行われるべきです。
まとめ:CBDと肝臓の正しい理解が、あなたの健康を守る
CBDは、その潜在的な健康効果で大きな注目を集めていますが、肝臓との関係においては、その代謝経路や潜在的なリスク、そして治療への可能性という複雑な側面を持っています。
- CBDは肝臓のCYP酵素で代謝され、他の薬との相互作用の可能性があります。
- 高用量摂取では肝酵素の上昇や肝障害のリスクが報告されています。
- 一方で、肝細胞がんに対する治療の可能性も研究されています。
「知ること」そして「適切な選択をすること」が、CBDを安全に、そして最大限に活用するための鍵となります。この記事が、皆さんのCBDに対する理解を深め、より健康的な生活を送る一助となれば幸いです。
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